壬生狼一家

Yahoo!ブログから引っ越ししてきた新参者です。宜しくお願いいたします。

『俺と富士山との出会いは・・・』 最終回

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動き出したブルドーザーはびっくりするほどの急斜面を力強く上がっていく。

相変わらず震動は驚く程大きく、うたた寝などできる訳がない状況である。

砂走りを上がっているので埃っぽい。

それにしてもたいしたものだ、ブルドーザーとほぼ同じ広さの道を

完璧なライン取りで上がっていく。


途中、何件もの山小屋を経由しながら黙々と上がっていく。

その度に荷物の搬入、搬出を手伝う。


8合目に差し掛かった頃、吐き気と、頭痛に襲われた。

昔から乗り物酔いがひどく、遠足や、修学旅行などに良い記憶がない。

大概は『エチケット袋』が必需品でいつの間にやら先生の横の補助椅子・・・


この揺れと、埃や排気ガスの中じゃ仕方ない。

でも休んでいられない。山小屋到着と共に荷物を運んだ。


自分の働く山小屋がどこにあるのかすら分からないまま、

早く目的地に到着してくれと願っていた。


途中から富士山登山の登山者、下山者 と同じ道を上がる。

狭い道を難なく上がるブルドーザー。よく引き込まないで上がれるなぁと感心するばかり。

きっとこのブルを操る中年男性は『どうせ避けてくれるでしょ』というような豪快な上りっぷりだ。

時折、大声で『どけっ!』見たいな声を発しながら大きな手振りで登山者、下山者を掻き分けていく。

しかし声はエンジンの轟音と、砂走りの溶岩を掻き分け前進するキャタピラーの音に邪魔され

俺の耳まで届かない。


空気の薄さを感じるようになったのは3000メートルを越えた頃、

既に気温は15度ほどだろうか、長袖の服に羽織った。

下界に広がる雲海、初めて見る光景だ。

ブルドーザー酔いの中、ドキドキ興奮も覚える。

どのような19歳の夏を感じるのだろう。


標高3200を越えた所にある山小屋で私は降ろされた。

極度の吐き気と頭痛、ブルドーザーのエンジン音が耳鳴りを起させていた。










そんなこんなが生まれて初めての富士山でした。

その後、3日間寝込み仕事が始められたのは4日目の朝からだった。

そう、実はこれが高山病だったのでした。