壬生狼一家

Yahoo!ブログから引っ越ししてきた新参者です。宜しくお願いいたします。

ステップワゴン2 デラクシー RF2 1999年8月18日

ステップワゴン2
ラクシー RF2
1999年8月18日




イメージ 1


この写真は俺が唯一部屋に飾ってある写真だ。

もう16年も前の写真で色褪せているいるけど、

唯一飾り続けている写真。


今日、この写真を撮ってくれた思い出の人が亡くなったと聞かされた。



16年前のGW明けだったと思うが、

それまで乗っていたカローラワゴンGツーリングAE100の
調子が悪く成りだし、新しい車に買い換えようかなと思い出し、
週末ごとにあちこちの車屋を回っていた。

当時俺の購入候補となっていた車は、
HONDAだとステップワゴン、HR-V、CAPA
MAZDAではプレマシー、MPV
NISSANではセレナであった。

カローラワゴンGツーリングの調子悪さで
TOYOTAは完全に外していた。

同じメーカーの車でもディラーを幾つも回りながら、
日々見積もりを集め回っていた。

本命はMAZDAのMPVであったが価格的な問題で
プレマシーにも心が揺らぐようなことがあった。

そんな中、HONDAの店を訪れた時のことを
今でもよく覚えている。

そのディーラーは古い建物で、
駐車場から中に入る裏口の扉はそれはちゃちかった。

当時HONDAは人気のミニバン、
ステップワゴンの初のフルモデルチェンジを行ったばかりで
店内には多くのお客さんが訪れていた。

なんか待たされそうだし、半分冷やかし程度の気持ちできていたので
さっさと帰ろうかなと思っていたら、
若い男の店員が人懐っこい笑顔で近寄ってきた。

まずは席に通され、ニコニコしながら話しかけてきた。
正直、始めどういう会話をしたかは覚えていない。
ただ、何を聞いても『すぐに確認してきます』といって
走って事務所の中に消えていった。

本当に何を聞いてもすぐに確認してきますと言って
事務所に駆けていく。

仕舞いに俺は、
『あのさ、あの事務所の中の人を呼んできたほうが早くない?』
と暗に担当者を変えたいと言うことを伝えた。

確認している人は店長だと言う。
他の営業の担当者は全て接客中で、
営業担当者は他にいないのだと言う。

俺は別に店長でもいいんだけどと思いながらも
店長にバトンタッチしてくれないので仕方なく、
その若者と商談を進めた。

余りにも知らないことが多いので俺は、
『君、車売った事あるの』と訪ねた。
『店長のお客様を対応させていただいて契約したことはあります。』
『まだ、自分の力で契約したことはないです。』
俺は『君新入社員?』と聞くと、
やはり新入社員だという。

肝心の価格交渉を行っていたときも、
『店長にいくらまで下げられるか確認してきます!』
といって、随分長い時間事務所に入ったきり出てこなくて
ようやく出てきたときには、
満面の笑顔で『ここまで下げてもらいました!』
と自分のことのように嬉しそうに俺に伝えてきた。

俺はさっき別のHONDAのディーラーでもらった見積書があるんだと
別のディーラーで貰った見積書を提示した。

3万円、この若者の提示する見積書のほうが高かった。

若者はすぐさま、事務所に走って消えていく。
しばらくしてこちらに戻ってくる表情で結果は分かった。

『店長、これが限界とのことでした。』
それはそれは落ち込んだ様子で話していたことを
今でもはっきり覚えている。

『じゃぁ、検討するよ』
と遠まわしにお断りすると、

『私は車を売った事がないですが、
私の始めてのお客様になってくれませんか』

『一生懸命頑張りますので』

名刺だけ貰いHONDAのディーラーを後にした。



数週間考えた末、あの時の若者が余りにも印象深かったので
HONDAのディーラーに再度足を運んだ。

店内には若者がいて、
俺の顔を見るなり人懐っこい笑顔で走ってきた。

その場で契約をまとめて
俺はその若者の初めて自力で契約したお客様となった。

そして納車の日、彼が撮ってくれた写真が
先ほどの写真だ。

納車の日、彼は俺と納車したばかりのステップワゴンの
写真を撮っただけでなく、
若者と俺のステップワゴンとのツーショットも別に残している。

その後は、ディーラーに足を運ぶと、
もう何千kmですねとか、何万kmですねとか、
俺の車の走行距離を知っていた。

なぜか尋ねると、
気になってたまに見に来ていると言う。

さらに誕生日には必ず花を自宅まで届けに来てくれたり、
毎年手紙まで書いてくれたりしてくれた。

あの人懐っこい笑顔と謙虚さは、
年を重ねても変わる事がなく、
16年が経過した。

途中、店長になったり、運営部門に移動になったりで
担当の営業は変わったが、何かあると顔を出してくれた。

2015年5月2日に、あれ依頼の新車ステップワゴンが納車した。
その日ももう若者ではなくなった彼も納車式に参加してくれて、
あの頃の思い出話をしながら笑顔で納車を祝ってくれた。



それから半年、
先日
彼がなくなったことを聞いた。




俺はよく新入社員を迎えるときに、
彼のことを新入社員に話す。

技術や知識は急には身に付かない。
それは誰しも同じこと。
今出来ることを一生懸命にやりさえすれば、
お客様の心にきっと響く。

彼のように不器用でも人に感動を与えられるような仕事を
皆もしてほしいと。



彼のご冥福を心よりお祈り申し上げます。