壬生狼一家

Yahoo!ブログから引っ越ししてきた新参者です。宜しくお願いいたします。

富士山登山2007 ~馬返しからの挑戦~ 第11回

気温は高くなっているが吉田口下山道に入り込むと周りには背の高い木々が生い茂っているので日差しを隠す。爽やかな下山が始まった。
今までのように砂埃が舞い上がるようなこともない。

『パワー漲る山男』『足痛いはずの奇声児』『笑顔満開Tシャツのお塩男爵』は向って左側のブル道を選ぶ、『ベンジャミン&レディ』は基本に忠実に吉田口下山道を選んだ。私は『ベンジャミン&レディ』と同じ忠実な道を選ぶ。既に先に出発した5人の姿は見当たらない。

さて、どのくらいで『ベンジャミン&レディ』を捕らえるかな?! 下山を開始する。登りの時はきつかった道も下山となるとスイスイだ。
勢い良く下山できる。ものの2分ほどで『ベンジャミン&レディ』が木々の間から見え隠れしだした。まだ彼らは私の追随がすぐそこまで迫っていることに気付いていない。『オヤジ ベンジャミン』が男らしく先を行き、けな気に『逆境レディ』が後ろを付いて行く。

この二人支えあっている、この富士山登山中、常に支えあって、励ましあって、助け合う姿に何かが見えた。

距離を詰めないようにスピードを緩めながら二人の後ろを距離をとって付いて行く。私の姿を二人は見付けた。しかし二人は全く気にかけてくれない。二人の世界は続いているのである。邪魔をしないように少し後ろを付いて行く。

私の責任はこの二人を無事『馬返』まで下山させ、溶岩温泉にゆったりつかること。『オヤジ ベンジャミン』の下山速度はやや物足りない。そこでペースメーカーを『逆境レディ』に交代、幾分スピードが上がる。途中休憩を取る、ゆっくり休憩を取ろうとするので

『はい、休憩終わり、さあ行くよ!!』

で再度、下山をスタートさせる。四合目、三合目といいペースが続く。ペースメーカーを『オヤジ ベンジャミン』に代える。ややスピードが落ちる。

『オヤジ!!さっきよりペース落ちてるじゃん!! ペース上げて!!』

でスピードが上がる。やはり苦労して登ってきた道も下山では楽だ。すると前方にイノシシ発見!? いや、『Tシャツ笑顔肉汁男爵』がへばり切って腰掛けて休んでいる。構わず追い越す。追い越されたとたん後を追ってくる。息を吹き返し我々を追い越しグングン先に行き消えてしまった。

二合目に差し掛かったときまた前方にバテバテの『Tシャツ笑顔肉汁男爵』がベンチに腰掛けザックをあさっている。そこも一気に追い越す『Tシャツ笑顔肉汁男爵』は今度はすぐには追ってこない。バテているようだ。

『オヤジベンジャミン』も『逆境レディ』も足の痛みを急に訴えだした。しかし、ここまでの下山ペースは思った以上に速い。だらだらした休憩を私が強制却下させているのも一つの理由ではあるが、この二人の頑張りもたいしたもんだ。肉体的にも精神的に一杯一杯ではあるが、ここまでは標準時間を上回る時間で下山できている。

後方から重たい足音が耳に入ってくる彼の到着だ、気温が上がって汗汁を大量に迸らせながら迫りくる。そのままの勢いで我々3名を追い越していった。すると『オヤジ ベンジャミン&逆境レディ』のスピードが一気に落ち込む。

『オヤジ ベンジャミン』の口から『大丈夫か、無理すんなよ』の無責任にさえ聞こえる言葉が発せられる。『本当に大丈夫か?』『逆境レディ』の表情は見るも無残に全く持って戦意消失してしまったK1戦士『ボブサップ』よりひどい。『オヤジ』も心のどこにも全くもって余裕のない表情で時折、しかめ面で痛み、苦しさをアピールしてくる。それでもまだ標準スピードを上回る速度で下山している。

二人の助け合いの下山も佳境を迎える。遂に一合目まで下りてきた。残り『馬返』までは10分ほど、『ツユダク肉汁男爵』も含め、我々以外の3人はすでに『馬返』で我々の到着を待っていることだろう。

『お疲れだ、遂に一合目到着!! あと10分でゴールの馬返!! 気合入れていこうぜ!!』

『うぃっす。。。』しょうもない声で返事する『オヤジ ベンジャミン』

『はい。。』弱弱しい声で返事する『逆境レディ』


ペースは大幅ダウンで『馬返』をめざす。あと少しだ頑張れよ。ここまで頑張ってきたんだからな。


『馬返』に近付いてきたのを分からせてくれる灯篭や、石碑、明大山荘が見えてきた。明大山荘は今日もあいている。そこには男性2名、女性2名が小屋の前のテーブルに腰掛ていた。

『冷たいものでもいかがですか?? 無料ですよ!!』

むっ、無料!!だ!! すかさず声のほうに3人は進む。冷えた麦茶を1杯、また1杯、更に1杯と頂き山小屋の人たちと、しばし歓談。

ここでは私の『金剛杖』の年季にはいり具合を注目される。ここでは多くを語らない。

『焼印押してかない? 今日は特別100円でいいよ!!』

焼印を見せてもらうと『馬返』と入った焼印だ。確かにこの焼印初めて見る焼印だ。

『一年で今日だけしか押せないよ本当だよ』と嘘っぽいことを言うが焼印を押してもらった100円で。
押してもらった焼印を見ると、こげている、なんだか焦げていてなんの焼印かさえ分からない。この山小屋の住人は焼印素人だな。

焼印は火の加減、天気、金剛杖の状態を的確に判断しズバッと焼きを入れる。私も山小屋生活2年間で1000本は焼印を入れた。お客様のご要望の濃さ調節までお手の物であった。


ちょっと焼印に残念な思いを残しつつ『明大山荘』をあとにする。すぐに『馬返』駐車場が目に入ってきた。前方から我々に気づいた『肉汁君』が笑顔でカメラを我々に向けてシャッターを切っている。自然と笑顔が三人の表情の一番外側に出てきていた。

『ご苦労さん、頑張ったじゃんオッサン!! お疲れ逆境さん♪』

何とか無事『馬返』に生還した。戦い抜いた総勢6名はみんな笑顔だ。満足した表情を浮かべ笑顔だ。肌はこんがり焼けていた・・・・。

                                             次回へ続く・・・