壬生狼一家

Yahoo!ブログから引っ越ししてきた新参者です。宜しくお願いいたします。

漢の富士登山道~珍道中~ ≪第22回≫

『砂走口 江戸屋』に到着した。
この山小屋『砂走口 江戸屋』の前には毎年色とりどりの「タルチョ」が棚引いている。
「タルチョ」とはチベットで旅人の安全を祈念して飾られるものである。なぜこんなところに「タルチョ」?
それもここの「タルチョ」は模して飾られているものではなく、本場チベットから運ばれてくる。今年も一部新調し飾られている。

いつものように『ウイッス!!』で『砂走口 江戸屋』の戸を開ける。いつもの見慣れた山小屋だ。そして奥のほうからかったるそうにいつもの顔も現れた。

『おっせぇなぁ~、何してたん!』

これが山小屋。何故かどこの山小屋にも腰の低い敬語の使い手は殆ど存在しない。サービス精神をもっと持てばもうチョイ流行るのにこの山小屋と思ったことは何度もある。毎年のことだ。

たまに見かけるのは『何だその態度は!!』と怒りをぶつけるお客。まあ山まで来て怒りなさんなって思ってしまう私は麻痺しているのかもしれない。

『布団が湿ってる』だの、『布団の中に砂が・・・』だの、『布団が臭い・・・』、だの
まぁ富士山来たらごちゃごちゃ言ってイライラしないで下さいよ。それも富士山ですよって心の中で思ってしまう。


山小屋で重い荷物を降ろし、履き続けた登山靴から足を抜くとようやく心も体も開放された。


『お蔭様で何とかここまで来れました。明日はどうされるんですか』ご夫婦もようやく安堵の表情を見せる。
『明日ですか、御来光はここの正面から上がるのでここで見て、それから山頂へ行こうと思います』

しばらく長く長い一日を振り返りながら時が流れた。夕飯のカレーをたいらげると、
『お先に、おやすみなさい』とご夫婦は床についていった。

平日の宿泊というのはもしかすると初めてかもしれない。いつも土曜日の宿泊だったのでギュウギュウすし詰め状態。今日はゆとりがある。
既に宿泊客は寝床に入り一時の仮眠を取っている。山頂御来光を狙う方は1時起きだ。

ふと時計に目をやると22時を過ぎていた。山小屋『砂走口 江戸屋』に到着したのは21時半、何となんと12時間半の時間を要していた。
                                                                                    次回へ続く・・・・