壬生狼一家

Yahoo!ブログから引っ越ししてきた新参者です。宜しくお願いいたします。

漢の富士登山道~珍道中~ ≪第21回≫

全くペースの上がらない3人は歩いても歩いても一向に到着できない『八合目 白雲荘』を目指していた。
暗闇の中にうっすらその姿は見えている。

何回休憩を取ったかすら覚えていない。白雲荘に到着。もう辺りに未だに登山を続けている者はいなかった。白雲荘に宿泊中のお客様が夕食を既に終え登山靴を山小屋備え付けのサンダルに履き替え眼下に広がる雲海を眺めている。

途中私たちを追い越していった団体客の顔も見受けられる。途中で『写真撮ってもらえますか』と声をかけて来た小グループも戦いを終えた表情で語り合っている。


現在進行形で戦い続けているのはわれ等3名のみあった。
『大変ですね』『頑張って下さい』『今日はどこまで行くんですか』ばらばらに声をかけてもらった。
きっと親子三人の登山者に映っていたであろう。
奈良から8時間かけて五合目までやって来た夫婦と、北口本宮富士浅間神社から半分修行を兼ねてやって来た一人の男。
全くの他人がここまで力を合わせてやってきた。お互い成し遂げる目標が違う者同士が、唯一の同じ目的『富士山頂に立つ』ために。

白雲荘を出た頃にはどこからも愚痴すら出てこない。最終的な難関『八合目 元祖室』までの道を、最後の力を振り絞って進みだした。
白雲荘から元祖室まではそれほどの時間を要さずに到着した。

休みなんかは取らずに元祖室から横に伸びる道をヘッドライトで探し当て『砂走口 江戸屋』までお互いの健闘を称えながら歩いた。
始めて笑顔で最後の道は歩いていった。

やがて『砂走口 江戸屋』の灯りが目に入ってきた。        
                                       次回へ続く・・・