壬生狼一家

Yahoo!ブログから引っ越ししてきた新参者です。宜しくお願いいたします。

漢の富士登山道~珍道中~ ≪第10回≫

思ったよりスイスイと下山できる。両親のほうが遅れそうな感じもする。

これが大人だったらこうはいかないだろうが、女の子は軽かった。
直ぐに私の山小屋の前に差し掛かると、アルバイト仲間は笑顔で声援を送ってくる。まるでマラソンランナーのように力をもらった。

ここから同じアルバイトが一人付いてきた。水やらタオルやらバックにいれて付いてくる。とうてい小学生を背負ってくれるようなパートナーではなかった。

八合目から七合目、六合目と進むに連れ足は問題ないのだが腕がパンパンになってくる。
大量の汗や、上がり始めた気温が私の疲労を助長する。六合目からは殆ど腕の力は使い果てて足を支え掴んであげることが出来なくなった。

女の子も私と一緒に戦っている。

なんとか私に負担をかけないようにと腕でしっかり掴まって、足も一層腰に絡めてずり落ちないちょうに頑張ってくれている。

厳しいし苦しい、あと2km少しでスバルラインの五合目到着となったころ、馬乗り場が視界に入ってきた。

ご両親は『ここからは馬で・・・』

すでにこの戦いは対して成し遂げる、やり切る、逃げないために馬の必要性は私からは無くなっていた。

私は笑顔で

『もう少しっすから大丈夫っすよ』

と答えるとやや上り坂になった下山道を最後の僅かに残された力を振り絞りながらいたって笑顔で残された2kmの道のりを惜しむかのように余裕を振り撒きながら予定されていた15時に余裕をもって到着した。

女の子も元気で両親も非常に感謝してくれた。
たったの数時間共に下山してきただけだが別れがなぜか辛い雰囲気であった。

『じゃあ、そろそろ山小屋戻って仕事しなきゃですから行きますわ』と言って
女の子と頭を撫でながら

『じゃあね、バイバイ』

と声をかけたら笑顔で『有難う、バイバイ』と言ってくれた。
別れ際にご両親からお金の入った封筒のようなものを差し出された

『いらんっすよ、いいトレーニングになりましたから、本当にいいっす。気をつけてお帰り下さい。モタモタしてたらバス乗遅れますよ』

じゃあということで冷えた自動販売機のコカコーラを一本頂いた。

『有難う御座います』と右手を伸ばしたがコカコーラを掴むことが出来なかった。握力が限界を越えていたようだ。

三人と別れ仕事場の富士山八合目の山小屋へ戻っていったが、3日間皿の一枚さえ掴むことが出来なかった・・・・。                               次回へ続く・・・