壬生狼一家

Yahoo!ブログから引っ越ししてきた新参者です。宜しくお願いいたします。

尊人の富士山登山 2015


尊人の富士山登山2015

~2015年9月12日(土)/13日(日)~



2年前かな?!

初めての富士山登山は富士宮口から宝永山までのお気軽登山であった。

当時5歳の尊人はスタスタ、時に走って宝永山登山を楽しんでいた。

その時、『頂上まで行きたい』といっていたが、まだ無理との判断で2年の歳月が過ぎた。

7月終わり、9月頭なんかも予定を立てていたりしたんだけど、

天候や俺、尊人の体調不良などもあって今回の富士山登山となった。



俺が初めて富士山登山を行なったのは25年くらい前だったような。

その頃、まさか自分の子供と一緒に富士山登山をするようになるとは、

感慨深いものがある。



今回の富士山登山の為、キャラバンの本格登山靴、モンベルの本気レインコートを新調した。

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尊人の持ち物はこんな感じ、子供連れの登山を考えている人は是非参考にして欲しい。

【当日身に付けるもの】
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【当日のザックの中身】
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富士山登山にあたり、心配事は尽きなかった。

体力勝負の富士山登山と思われがちだが、富士山登山は体力も必要ではあるのだが、

精神力の方が何倍も必要な要素だと俺は考えている。



誰だって富士山登山は辛い、きつい、苦しい。

だけどそれを乗り越える為、負けない為には忍耐力が強いか弱いかが左右する。

まだ7歳の尊人には忍耐力を測り知るだけの経験をさせていない。

この富士山登山で初めて知る事となる。



弱音を吐いて諦めるのか、なにくそ根性でやり遂げるのか。



出発の数日前から登山の準備を整え、出発の朝を迎えた。

起床は5:10、辺りはまだ暗い時間帯だ。

準備を済ませ、5:47分に自宅を出発する。



朝食はコンビニのおにぎりがいいと昨日から言っていたので立ち寄る。

俺なんかは絶対に買えない、

ファミマプレミアムシリーズ 『魚沼産こしひかり かつおだし香る 海老天むす』

なる、パッケージも豪華なおにぎりなどをチョイスした。

仕方がないが買う事とした。



圏央道から中央道は比較的スムーズの進んだが、八王子の合流手前で約1kmの渋滞はあった。

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河口湖ICを下りてそのまま富士スバルラインから五合目の駐車場に向かう。

自家用車の規制が8/31をもって終了しているので自家用車で五合目の駐車場まで進める。

こちらも渋滞もなく五合目の駐車場の手前まで進んだが、途中警備員に止められる。

五合目の駐車場が現在満車のためここに車を止めて無料連絡バスで五合目の駐車場まで行くようにとのことだ、

バスは30分に一度やってくるという。

ここから歩くとどれくらいなのか聞くと、なんと1時間以上と言う。

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仕方なく駐車する事とした。

次々とあとから到着する車は駐車していく。



ただ30分に1度のバス、歩けば1時間以上・・・

バスはギュウギュウで座れないだろうし、30分に一度も・・・

警備員に交渉をする事とする。



『上に1台くらいは空きあるでしょ ♪

何台か下りて来ている車があるじゃない~。

何とかならないかなぁ~。』



警備員さん、

『確認してみましょう!』



・・・・『上に2台空きがあるようです!』



『あざすぅ~』



警備員さん、

『今から大宮○○○、○の、○○○○の黒のステップワゴンを1台上げますので宜しくお願いいたします!』

と上にいる警備員へ連絡してもらい、



『皆さ~ん、ごきげんよう

警備員さんあざーすぅ~』

で、かなり上まで進む。五合目の駐車場まで1200mだそうだ。

ここなら歩いても15分くらいだから歩けない距離でもない。

大人しく駐車し、富士山登山の準備開始。

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天気は最高です。

風も殆どなく、コンディションとしては申し分ない。

俺もこの日のために軽くダイエット、最大ウェイトから5kg落とし、

肉類は殆ど絶ち、アルコールも控えてきた。



俺も何度となく富士山登山にやってきているが、

相当に体調は良い。

さらに喫煙者から、非喫煙者になって半年、間違いなくアドバンテージだ。



尊人も先週末高熱を出し、富士山登山を一週間延期したものの、

今は多少咳は残るものの体調は万全のようだ。



朝食をステップワゴンの中でとる。

尊人は通常タイプのおにぎりを食べる。

俺も通常タイプのおにぎりを沢山食べる。

少しでも荷物を減らしたいのと、

俺の体のガソリンを満タンにしておきたいので、沢山食べる。

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気付いたら尊人おかかのおにぎりも1個食べてしまっていた。

尊人には怒られたが、

ファミマプレミアムシリーズ 『魚沼産こしひかり かつおだし香る 海老天むす』

ではなかったので余り怒らない。

結局、ファミマプレミアムシリーズ 『魚沼産こしひかり かつおだし香る 海老天むす』

はお昼に食べるという事で食べないで、ザックに入れた。



朝食を食べ終え、いよいよ着替えて富士山登山の準備を整える。

極力、荷物を減らしたいと、ザックの中身の選別は非常に重要だ。

減らし過ぎて後悔するのか、入れ過ぎて重量に後悔するのか。

今回はいったい。



歩いても五合目の駐車場まで15分ほどなので、

バスに乗らずにウォーミングアップがてら歩いて行こうと言っても、

バスで行きたいと尊人はいう。

そうこうしているうちにバスがやってきてしまった。

あっという間に、俺たちを乗せずに行ってしまった。

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仕方がないから歩いていこうというが、バスで行きたいと譲ってくれない。

仕方なくバス停で待つ事とする。

本当にバスがやってこない。

一緒に体操したりして体を起こす。

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30分ほどしてやってきたバスは、乗るスペースがないほど混みあったバスであった。

何とかふたり乗り込んで駐車場へ。

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数分で到着し、早速富士山登山に出発。時刻は9:30前。

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予定では16:30に今宵の宿、本八合目胸突江戸屋(上江戸屋)に到着させる。

7時間で到達させる予定である。

今回の登山口『吉田口ルート』は、オフィシャルHPで4時間30分と表記される。

山小屋江戸屋のHPでは5時間00分、

俺たちの予定所要時間は7時間00分。

一般的に記されている所要時間と比較すると、2時間から2時間半も余分に掛かる計算だ。

7歳だから余計に掛かるというより、

俺は4時間半とか、5時間といわれる所要時間のほうが怪しく感じている。



この4時間半とか、5時間といわれる江戸屋までの所要時間、

これって何を基準としているの???????



大人の平均所要時間なのか?!

何歳基準の平均所要時間なのか?!



間違いなく、五合目を出発して江戸屋に到着する人たちのうち、

4時間半で到着できる人は20%

5時間以内で到着する人も30%以下だと思う。



一般的な体力で80%以上の方が到着できる所要時間は6時間~6時間半と俺は断言する。

なぜそこまでズレが生じるのか・・・・。



簡単だ。

4時間半とか、5時間とか書かれているのは休憩時間は含まれているの?

答えは、含まれていないのである。単純に歩いている時間、行動している時間の積算値が

4時間半とか、5時間なのである。



じゃあ、山頂までの所要時間で考えるが、

だいたい5時間30分~6時間30分が一般的。

これも休憩時間は抜きで明記されている。



山頂まで一般的に何回休憩を取るかを考えると、平均で10回は越えるだろう。

一回の休憩で5分の時もあれば、30分、60分の時もあるだろう。

富士山頂に到達するまでに平均100分辺りの時間は休憩時間となっているだろう。

それらを加算すれば富士山頂までの所要時間は7時間30分~8時間30分となる。

そうすると一般的な体力で80%以上の方が到着できる所要時間は8時間~9時間と俺は考える。



富士山登山に要する所要時間の表記も平均休憩時間を含むにするべきと思う。

所要時間を短く表記する事により登山者に少しでも楽に登山できるイメージを持たせ、

富士山登山に誘おうとする営利を含ませた表記に感じて仕方がない。



余談が過ぎた。

つまり、80%以上の方が到着できる所要時間は6時間~6時間半より

少し時間を要する計算である。



スタートからほぼ平坦な中、ちょっとしたUP、DOWNが続く。
順調なスタートだ。気温も半袖では少し寒い程度。
気になるのは俺のキャラバンGrandking GK79も尊人のキャラバンC1 JRも

今日初めての実戦投入となるので靴擦れの恐れが大いにある。



登山者は流石に9月も中旬になる頃なので少ないのだが、

団体登山客は少ないのものの、外国人の登山者は非常に目立つ。



平坦なUP、DOWNがそろそろ終わる頃、尊人はイナゴを見つけた。

手に持って、富士山にイナゴがいることに感心していた。

時を同じくして、疲れた休憩にしたいと言い出した。

尊人は何かをこじつけて自分の意に沿わせようとする癖がある。

直接的にこうしたいとは言わずに、遠まわしな言い方をする。

よく敬人が利用されている。

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六合目の安全センターまで頑張ろうという事で、小休止はちょっとだけ入れつつ、

六合目の安全センターに到着した。

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トイレ休憩や、チョコレートなどを口にして、水分も補給する。

思っていた以上に尊人の体力がないことを知った。



六合目を越えると休憩の回数は増え始める。

呼吸は上がっている訳ではないので普通に会話をしながらの登山なのだが、

何故か休憩をしたいがために寒い、服を着る。のどが渇いた、お菓子を食べる言い出す。

直接、疲れたから休みたいと言えない性格は年を重ねても変らない。



富士山登山のペースは感心するくらい速い。

ただ登山のペースが安定していない。

速く歩いたり、遅く歩いたり。

同じペースで歩かないと疲れるよとアドバイスしても変る事はなかった。

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七合目が近付いてくると、疲れがだいぶ出始めた。

休憩の頻度も増え、休憩に要する時間も長くなり始めた。

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辺りの登山者も抜きつ、抜かれつで、だんだん顔見知りが増えてきた。

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ただ休憩をとっていると毎回のように他の登山者に、

登山者 『 いくつ? 』

尊人 『2年生』

登山者 『凄いね!がんばってね!』

尊人 無視か、『うんん』

何十回この会話をこの富士山登山で聞いたか・・・・。

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七合目手前から、20分に一度くらいかな、

『あとどれくらいで山小屋着くの?』

と、尊人が繰り返していた。

疲れてきた証拠だ。

靴擦れも発生し始めたのもこの頃だった。



この登山中、少し気になり始めていたのは登山者のマナー。

自称、富士山の門番宜しくな俺な訳ではあり、

多少の事と目を瞑る事もしばしばではあった。



だが、この登山一発目の取締りを行なう事となったのが、

六合目から七合目に向かっている途中での出来事であった。



それは、登山道をから奥に50mほど入った立ち入ることが許されていない場所。

そこに2人の許されざる愚か者を発見。

本当に呆れちゃうけど、大きな溶岩の上に乗って一人がハシャギ、

もう1人は面白おかしく写真をパシャパシャ!!

溶岩の上に乗ってバイクのハングオンの真似事をしてハシャいでやがる。

目を疑う光景だ。

岩が崩れたらどうなるのか、石を転がしたらどうなるのか。

一個の小石でさえ誤って落とせば人の命を奪う事になる。

そんなことも知らない愚か者に一喝加える。

二度、三度、喝を入れるが行為は止めたが、無視している。

俺・・・・、

堪忍袋の緒が切れちまった。



俺、

!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

『分かったか!!』



愚か者

『はい、はい。』



この、全く反省のない人を馬鹿にした 『はいはい』 

に堪忍袋の緒が切れた。



もう悪りんだけど絶対に許さないよお前ら。

二度と山に来るんじゃねえぞぉ。





その光景を横で見守る尊人、かなり動揺。

ただね昨今、人に注意できない人って多いじゃない。

トラブルを恐れて行動できない人。

仕返しが怖いとかね。

分かるよ俺も、でもね俺は間違っている事には正さずにはいられない訳でね。

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依然として富士山登山を戦っている尊人。

綺麗に広がる雲海や、遠くの山並みも見る余裕がなく、

尊人の視界は斜め下方向の前方50cmくらいなものであった。

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七合目に無事到着、尊人は相当疲れているが、気持ちは保てている。

登坂の速度は結構速くて時として俺が追いつかなくなる。

七合目途中から、

『眠い』

と言い出し、この富士山登山に苦しみだす。

『寝たい、いつ着くの?』

『疲れた、休みたい。』

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流石にこの状況となると遠まわしの言い方をしてこなくなった。

ストレートに自分の意見が言えるようになってきた。

『頑張ってあと○時間で着くから』と言っても、

尊人の口数は減っている。

『辛いんじゃ、下山するか?帰るか?』

というと、尊人の『帰らない』だけは一貫していた。

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八合目の白雲荘に到達したのは15時半。

気持ちが切れることなく、休憩時間や、スピードは落ち始めているけど

頑張って登山を継続している。

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ちょっと顔を覗くと涙を流している時もある。

『疲れた、寝たい、いつ着くの?』

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俺 『あと1時間切ったよ』
といってもテンションは上がらない。

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六合目付近ではあんなに小さく見えていた亀岩も、
気付けばすぐ横に来ていた。
太陽は富士山の裏側に行ってしまったので、
日差しがなくなり、急激に体感温度が下がった。

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5分歩いては30秒~1分の休憩といった周期を繰り返し、
体力の限界に近付いている尊人を鼓舞する。

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ようやく八合目の山小屋を越え、八合目の上層部に位置する富士山ホテル、
トモエが目の前に迫ってきた。

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休憩をする頻度は増えたものの、行動中のスピードは衰えない。
精神力だけしか残っていないはずだが、黙々と登っていく姿に成長を感じる。

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16:50、ようやく、本当にようやく本日宿泊の本八合目胸突江戸屋(上江戸屋)に到着。
長かった、尊人も安心したようで表情も柔らかくなっている。

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尊人の人生最も過酷な行程だったと思う。
本当は途中で止めたかっただろうし、ここまで来れる自信などなかったと思う。
体力も七合目の途中で限界を向かえ、未知なる領域で戦い抜いた尊人。
本当に良く頑張った。

江戸屋の入り口にはいつもの顔が忙しそうに夕食を運んだり、
宿泊者の対応に大忙しである。
アイコンタクトを取ると、落ち着くまで山小屋の外で待つ事とする。

5分ほど待って声を掛けていただき、まずは寝床へ案内してもらう。
尊人は早速横になって安心した表情を浮かべている。
標高3400mを越える江戸屋に標高2300mの五合目からよく歩き通した。
ここまで、五合目を出発してから7時間以上も掛けてやってきた。
大したものだと感心させられた。
人生でもっとも苦しい7時間だったろう。
途中、2、3度涙を流していたが、頑張った。本当に頑張った。
この7時間の経験はきっと、彼の人生の中で生きてくるだろう。

寝床で30分ほど休んでいると、夕食の用意が出来たと呼びにきてもらった。
今宵の夕飯は爆盛カレー!!と期待している人には申し訳ないが、
一般の宿泊者と同サイズの庶民カレー。

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俺が江戸屋で働いていた頃って、カレーといえばご飯とカレーしかなく、
それはそれはみすぼらしいカレーを提供していた。
今はこんなんだ。

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ご飯、カレー、ハンバーグがどんなものなのかは知っているが、
それでも不思議と美味く感じるから山小屋飯は不思議だ。
サービスで非常に温まるコーンスープを頂いた。
いつもすみませんと、申し訳なく感じつつも頂く。
尊人、『凄い!!超美味しい!!』
と感激しながらコーンスープをスプーンで一口ずつ口に運び味わいながらいただいている。
折角暖かいから、冷める前に飲んじゃえばといってもスプーン一杯ずつしか口に運ばない。

合席になった70歳の男性の方と、40代後半だろうか女性の方も尊人が登ってきた事に感心している。
山の楽しさの一つはこういった、同じ目的で偶然顔を合わせた人たちとの交流である。
70歳の男性は最近奥様を亡くされて、古希の記念と奥様が23歳の時に富士山に登っていた事を知り、
23歳×3=69 が重なるので記念にお1人で富士山登山に挑戦しているそうだ。
女性の方はもう何度も富士山登山の経験があり、富士山以外の山の経験も非常に豊かな方であった。

食事を済ませ、かみさんに電話を掛ける。
恥ずかしそうに電話で話している。
数分の会話が終わり、再び寝床へ。

今回の江戸屋の宿泊状況は超満員、当日の宿泊を受付けないほどの混みようだ。
正直ここまで混んでいる状況で泊まった事は一度もない。
4枚の敷布団の上に9人が寝る。普通に横になっても肩が隣の方に触れる。
寝返りは打てない。正直眠れるはずがない。
運良く壁際の寝床になったので壁側に尊人を寝せ、その横に俺が寝る。
これで尊人の寝るスペースを俺の体で守ることが出来る。

寝床で横になって休んでいる時も頭くることが2つあった。
1つは、4枚の布団で9人が寝ているのだが、奥の輩が俺らに
『明らかにこっちの方が広い』と、詰めろと言ってきた。
アホか、スペースは明らかに均等だ。
ただ尊人が子供だからその部分が見た目でゆとりがあるように見えるので、
スペースを取り過ぎと見える。
こういうアホは無視してもいいのだが、俺を含め皆が少しずつ横にずれた。
その結果、いちゃもん野郎のスペースが大きく取れた。
まぁいい、文句は言わないで置くけど、お前の考え方は許さないし、許せない。

それだけで終わればいいんだけど、そうも行かない今回の寝床。
向かいの寝床に6人くらいいたと思うんだけど、
大学生の男女混合のサークルのグループが入ってきた。
まだ消灯前ではあったけど、半分くらいの人は横になって休んでいる。
にもかかわらず、自分たちの世界でぺちゃくちゃしゃべっている。
『俺トランプもって来たよ!』
非常にいやな予感がしたが、その予感は的中した。
6人くらいで丸くエンジンの様な布陣を敷き、カードの様なもの配っている。
始まってしまった。トランプ大会の開幕だ。
まだ消灯時間前なので必死に俺も我慢していた。
俺だけじゃない、周囲の数十人は我慢している。

そんな状況でも疲れきった尊人は眠るにつけている。

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20:30となり、消灯となった。
流石に見えないのでトランプ大会は終焉を迎えた。
が、しかし・・・
サークルの恋話思しき会話で盛り上がり始めた。
『●●先輩がかっこいい』とか、
『●●の彼女って●●だよね』とか。
どうでもいい会話が続く。
既に消灯となっているのに同でもいい話が続く。

一向に止めない。そばで寝ている疲れ切った登山者は誰も注意しない。
なんで皆黙っているのか。
しつこいが既に消灯時間を過ぎている。
何で横で寝ている奴は注意しないのか、気にならないのか。
気にならないはずは絶対にない。

俺も何で今我慢しているんだろうと思うと行動に出た。
『君たち、周りの人たちは皆疲れえているんだよ、
君たちがぺちゃくちゃしゃべっていてどう思っていると思う?』
俺の質問に誰も答えない。
『あのね、皆迷惑に感じてるよ、周りの人寝てると思うか、皆眠れないで、君たちの行為にイラついてんだよ。』
『ここは寝るところ、ぺちゃくちゃ騒ぐところじゃない、しゃべるんだったら食堂にでもいってやってくれ。』
『分かったかい』
・・・ちらほら『はい』
『君たち分かってない様だね、分かった人は』
・・・全員揃って『はい』

30秒後皆揃って食堂へ向かった。
1時間くらいして戻ってきたけど、言葉を発せずに静かに眠りに着いていた。
反省していないだろうけど大人しくなったので良しとする。

さてと、寝ようかと思うのだが、横の人が動いていて横になっても足を伸ばせない。
伸ばすには左の足の上に右足を重ねるようにしなければいけない。
狭い、狭すぎる。夜中の1時を過ぎれば山頂ご来光の方は起きだす。
半数以上は山頂ご来光を目指すだろうから、1時過ぎまでは眠れなくても横になっていようと決めた。

何時間もただ横になっているのは実に辛い。
いびきも、寝息すら殆ど聞こえてこない様子をみると俺だけじゃなく、
大半の方は余りに窮屈で眠ることが出来ていない。
ただひたすら1時になるのを待ちわびた。
疲れてはいるのだが不思議と眠気はやってこない。

携帯を見ることもできないので今何時なのかすら想像できない。
22時なのか、23時なのか、はたまた21時半なのか。
本当に苦痛な時間が少しずつ過ぎていく。

聞こえるのは尊人の寝息程度で全くといっていいほどその他に人たちから
寝息すら聞こえない。たまに聞こえてくるのはおならの音だったりする。
何時頃か全く分からないのだが、山小屋の外から突風の様な音が聞こえ始めた。
時間が経つにつれ風の音はどんどん大きくなる一方であった。
ご来光を見て山頂に向かうまでには治まって欲しいと思った。

しばらくして誰かの携帯が光った。
もしかして1時のアラームかと思ったら、違っていた。
ただ携帯を覗き込んでた人が独り言の様な小さな声で『まだ12時か』と漏らした。
あと1時間という明確な目標を持ち、ただひたすら横になり時間を過ごしていた。

遂に1時となり何人かのアラーム音が聞こえた。

すぐに何人かの方々が山頂に向け準備に入った。
これでやっとスペースが出来てゆっくり眠れるぞと思った。

しかし、少しして、団体客のガイドが周ってきた。
『●●ツアーの方、本日突風が吹いており、頂上直下は特に強く非常に危険です。
本日の五合目から山頂に向かわれるツアーも全てキャンセルとなっています。
万が一、怪我をしてしまったら富士山では非常に大変な事になります。
非常に残念ですが、山頂行きは中止とします。ですのでこのままご来光までお休み下さい。
ツアーに参加させていない個人でお越しのお客様に関しましても、山頂へ向かうのは避けられるようにお願いします。
非常に危険な状況です。何か起きても自己責任となります。日が出ました、速やかに下山をお勧めします。』
俺はその時、
『なんだよ大袈裟なガイドだな』と思っていたし、
何でだよ、それじゃゆっくり寝れないじゃないかよって思った。

結局、寝返りもうてない状況のまま朝を迎えなければならなくなった。
眠った記憶がないまま山小屋の友人が、
『そろそろ外明るくなり始めたよ』
と、起こしにきてくれたが、俺は寝ていなかった。

時刻は4:30、ご来光は5:15位なのでまだまだ時間はあるが、
尊人を起こす。ビックリするくらい普通に起きた。

まずは、強風で山頂に行くのは危ない事を伝え、
山頂まで行くか、来年に楽しみを取っておいて、今日は下山するのか意見を聞く。
危ないんだったら止めておくということで本日はきっぱり諦めて下山を選択した。

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窓から外を覗かせると、地平線が赤く色着き始めた綺麗な光景が広がっていた。
トイレに行ってから服を着込んで山小屋の外に出た。
既にご来光の写真を撮ろうと何人もスタンバイしている。
ご来光は5:15頃なので30分ほど先だ。
尊人の自分のカメラで数枚シャッターを切る。
『寒い』とういので一度山小屋の中に入ってご来光まで待機。

5:10位に撮影ポイントにスタンバイする。
余りの強風で尊人を押さえていないと飛んでいきそうなくらいだ。
徐々に明るくなり、今にも姿を現しそうな地平線をじっと見つめる。
出た。
辺りから歓声が上がる。
尊人も俺もシャッターを切りまくる。

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2、3分ほどで尊人は
『寒い』というので山小屋へ戻る。

外はすっかり明るくなり、他の登山客は早々に下山を開始していく。
本当に立っていられないほどの強風が吹き付け、下山するのも危険なほどであった。
さらにつるし雲が目の前に浮かんでいる。
この雲、登山家には常識であるのだが、天候の悪化を知らせる雲だ。
今日はやばいかも。

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本日で今シーズンの営業を終える江戸屋は、6時までにチェックアウトを済まさなければならない。
寝床に戻り、下山の用意に取り掛かる。数時間も持たないで天気は崩れることが予想できる。
尊人にはこのあと天気が荒れるからとっとと帰ろうということで、山小屋の面々に挨拶を終えると、
6:00下山を開始した。

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余りの強風で尊人の足は止まってしまう。それほどの強風だ。
富士山の下山道に関して歩きなれないと恐ろしく時間が掛かってしまうことがある。
俺が普通に歩いて下山すると2時間ほどで五合目の駐車場に到着する。
急いで歩き、休憩を抜けば1時間半ほどだ。

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さて、尊人の下山に関してはどうだろうと、まずはゆっくり下山を開始する。
数歩歩くと転んでしまう。
まずは歩き方から教えないとということで、
踵から着地、小幅に歩き、がに股で・・・。
少し教えたらコツを掴んだようでペースが上がりだす。

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ただ、滑って転ぶ時が多い。
一本尊人にストックを渡し、左手に持たせ右手は俺と手を繋いで、俺の右手はストック。
このフォーメーションが一番バランスがとれ安定するし、下山のスピードが上がる。

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ちょいちょい休憩を求めてはくるが、体力的には全く問題ない。
七合目辺りまで下りてきたら、
ポツン・・・ポツン。
雨が降り出した。強風の上に雨、流石はつるし雲が出ているだけのことはある。
急がないと確実にやばい状況となった。
尊人にはレインコートを着せて、フードを被らせる。
俺は長袖のバートンシャツ一枚で雨をやり過ごす。

凄いのは尊人の下山のスピード。
あっという間に六合目まで下山。既に100人以上は追い越している。
多分200人くらい最終的には追い越したんじゃないかな。
追い越されたのは10人くらいの様な気がする。

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六合目からはシャワー状の雨が上から、下から、横から吹き付けてくる。
レインコートのフードを被っていても顔も髪の毛もビッショビショの尊人だ。
でもへこたれない。疲労感は全くない。昨日の尊人とは全く違う。

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最後の五合目の駐車場までの微妙にUP、DOWNが続く辺りまで下りると、
佐藤小屋の方向から救急車が現れた。何かがあったのだろう。
救急車に道を譲ると、五合目のお土産屋が見え始めた。
そこまで来ると雨と風は大暴れをしている。
気温も低いので寒い。
俺の上半身はビッチョビチョだがここまで来たらレインコートなんて着ない。
急いでお土産屋を目指す。

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ゴールまで残り200m位から今回の富士山登山について感想を聞きながら
かみ締めながら200mを歩く。
俺 『どうだった、富士山登山。あと少しで終わっちゃうぞ』
尊人 『楽しかった』
俺 『ほかに感想は。』
尊人 『・・・・』
他の言葉は出てこなかった。
でも来年も来たいというので俺としては一安心。

8:00ちょっと前に無事下山完了。
相変わらずの大雨の中、無事帰還。
お土産屋でキーホルダーを自分のお土産として購入。

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車を止めている6番バス停の駐車場行きのバスを15分ほど待って、
帰りは座れて戻った。

風邪を引かないようにすぐに着替えて、お菓子やら、パンやらを摘んだ。
かみさんにも下山の報告の電話をする尊人。

車に暖房を初めて入れながら、6番バス停の駐車場をあとにする。
時刻は9時10分。
渋滞も全くなく自宅に到着は10:50。
あっという間に家に着いた。

家に着いて山小屋でもらった朝食のお弁当を食べた。

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尊人の強いところも、弱いところも見ること、感じることが出来た。
家を出て、家に帰ってくるまでのたったの29時間、
富士山にいたトータル時間はたったの24時間。
でも、尊人の中では彼にとっての沢山の発見もあっただろうし、
感じる事も沢山有ったと思う。
精神的に逞しくもなったと思う。
富士山山頂までいけるだけの忍耐力もあったので、来年は山頂を親子で成し遂げたい。

既に来年が楽しみだ。


おしまい。