壬生狼一家

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『異常人気、富士登山』

異常人気、富士登山
2008.9.9 02:22
 今年7、8月の夏山2カ月間に山梨県側から富士山頂を目指した登山者は、24万7000人に達した。要因は複数あるが、ひと夏にこれほど登るととんでもない者も出てくる。一方で世界文化遺産登録への動きが加速する中で、自然保護に「登山を有料制に」との話も出てきた。“2008夏・富士山”を総括した。(牧井正昭)

 昭和56年以降の記録では62年の20万277人が最高だった。今夏は一気に記録を更新。排ガスから動植物を保護するため、毎年8月中旬の2週間、5合目に通じる有料道路のマイカー規制を実施するが、規制もなんのその。バスは通行可能で今年は平日でも3000~8000人の登山者が入山した。“暑いと登山者が増える”というが、暑さだけではなさそう。

 ふもとの富士吉田市富士山課の分析だと、「今夏は山の天候が安定していた」ことが第1の理由に挙げられる。シーズン中に日本の南海上で6個の台風が発生しているが、富士山には1個も接近していない。第2が「富士山の世界文化遺産登録への動き」。これが注目度を高めた。「ガソリン高騰で“安近短”の富士登山が選ばれたこと」も大きい。都内の登山用品店などでは退職した団塊世代に夏山登山を推奨。当然、目標は富士山だ。

 一方でマイカー規制も好影響を与えたという。旅行会社などは「有料道路に自家用車が入らず渋滞がない分、スケジュール通りの登山ができる」ことも挙げた。山小屋では快適な宿泊を“売り”に今夏から収容定員を厳守。登山者が急増した背景には、こうした要因がある。このブーム、来年以降も続きそうだ。

    ◇ ◇

 これだけの人が富士山に登ると、いろいろある。8月中旬の午後11時ごろ、8合目の救護所に親子4人が飛び込んできた。「息子の具合が悪い」という父親の横で小学生がTシャツ1枚で震えていた。夏山とはいえ、夜の8合目辺りでは気温が10度以下。スタッフが「着替えは」「山小屋の予約は」と尋ねると、「着替えも予約もない」。子供が富士山の知識のない父親の犠牲になってしまった。すると父親は「ここ(救護所)で寝かせてくれ」。無責任さにあきれる。

 トイレのトラブルもあった。富士山の山小屋では全部が昨年までに浄水循環式やバイオトイレに変わったが、ある山小屋では不具合が発生。処理水が浄化されず、水抜きをしなくてはならない状況となった。2カ月に1度、メンテナンスを実施すればいいはずが、利用者増で処理能力を超えたため、この山小屋では3回も処理水を交換した。

 胸をなでおろす話もある。8月7日、埼玉県の50代の男性が7~8合目間の岩場で倒れた。男性は一時心肺停止。8合目の救護所に運ばれたが、山小屋にはAED(自動体外式除細動器)が備えられていた。AEDを使って医師の処置を受け、男性は意識を取り戻した。

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 登山者が20万人を超えるようなシーズンだと、夜明け前の山頂直下は「ご来光を山頂で」という登山者でごった返す。登山道からはずれて登るため山肌を荒らす。ごみ問題もある。樹林帯では高山植物が踏み荒らされたりもする。山梨県側5~8合目の山小屋16軒の定員は1日計約3300人。多い日は1万人以上が登り、小屋に泊まれない者も出る。

 今月2日、富士吉田市の堀内茂市長は記者の質問に「将来は入山料が必要だろう」と、富士山を保護する財源を登山者に求める考えを示した。入山料の徴収は登山家の野口健氏が著書「富士山を汚すのは誰か」で提案していた。「入山料が入れば、保護管理の財源に充てられる。長いスパンで考えて、植林、遊歩道の整備、植生の調査等々に本格的、専門的に取り組める。仮に5合目まで行く人に1人100円負担してもらえば、200万人で年に2億。500円で10億。まとまった費用が、富士山の保護に費やせる」と説いた。

 入山料を取ると、今まで以上に入山者の安全確保に努めなければならない。となれば入山を制限する方法も考えなくてはならないが、富士河口湖町の渡辺凱保町長は「人的被害がみえた場合には“入山規制”が必要だ」と話し、富士山の人的な環境破壊には抜本的な対策が求められると指摘した。

 富士山は日本の宝だ。経済的恩恵があり、富士山と互恵関係を保つうえで、入山料や入山規制を考えようという状況にようやくたどり着いた。静けさが戻った「秋富士」がほっとしているようにみえる。



http://sankei.jp.msn.com/region/chubu/yamanashi/080909/ymn0809090224000-n1.htm