セミ

昨日の帰り道アスファルトの上にひっくり返った蝉の抜け殻を見つけた。

んっ?

ちょっと色味が違うぞってよく見ると蝉の幼虫で抜け殻ではない。

拾い上げると足や手を動かしているじゃないか。

そのまま指先に掴まっているので家に連れて帰った。

何とか成虫にしてあげようと普段は室内に置いてある観葉植物を
ベランダに出して葉っぱの上に乗せてみた。

コテンとすぐに落ちてしまう、
何回乗せてあげても落ちてしまう。

仕方なくそっと植木鉢の土の上に置いた。

暫くしてから元気かなと覗きにいくと横になっていた。
どうやら相当弱ってしまっている。
割り箸なんかを土にさして掴まれるか試したが掴まれない。
倒れないように土を平らにすること位しかしてあげられなかった。

心配だったがなんとか頑張って蝉になって欲しいと思いながら寝た。
布団に入ってもなお気になっていた。

朝起きるとすぐに見に行った。蝉の抜け殻だけ残っていて欲しいと。

願いは叶わなかった…。

蝉は半分脱皮した状態で死んでしまっていた。

悔しくて悲しくて目頭が熱くなった。

複雑な気持ちに苛まされた。

あの時拾い上げなかったらもしかしたら成虫に成れたんじゃないのか。

違うやりかたすれば成虫に成れたんじゃないのか。

余計なことしで殺してしまったんじゃないのか。

今なお懺悔の念にかられている。

ごめんな蝉の幼虫くん、
余計なことしてしまって、

羽ばたくことさえさせられなくて…