壬生狼一家

Yahoo!ブログから引っ越ししてきた新参者です。宜しくお願いいたします。

漢の富士登山道~珍道中~ ≪第27回≫

山頂から下ること20分ほどで山頂を包んでいたガスから抜けた。ガスを抜けると日が出ていた。気温も一気に上がる。

下山道の途中に残雪もかなり大きな範囲で残っている。この時期、ここまで大きな残雪が残っているのも珍しい。ご夫婦も残雪に驚きながしばらく立ち止まり休んでいたが、その後は軽快に足が前に出ている。休憩時間も含めて一時間ほどで『砂走口 江戸屋』に到着した。

ザックを受け取り下山で使う水分を残して、残りの水分は飲み干し食料も大半を食べ尽くした。ザックを少しでも軽くすることと持ち帰らなければならない注文していた通称『チベ服』をパッキンしなければならないからだ。これはチベットの民族衣装のチベット服で昨年の夏注文していたのが出来上がっていた。当然山小屋で作っているわけではない。チベットで作った『チベ服』を富士山八合目『砂走口 江戸屋』
まで届けてもらっていたのである。

山小屋『砂走口 江戸屋』前には「タルチョ」が棚引いている事は前に述べたが、実はこの山小屋のスタッフは通称『チベ服』と呼ばれる
チベットの民族衣装を着ている。どれも正真正銘チベットで作られた『チベ服』である。
『何故??』と思った宿泊客もきっと多いことと思うが。多分『どうしたんですかその服は?』と聞いてもまともな答えは期待できないだ
ろう、彼らのことじゃ。勇気ある登山者の方は一度聞いてみたら如何だろうか?。

ザックは登りよりも数キロ重くなっていた。ザックにしまう事が出来なかったものは仕方なく手に持って運ぶことにする。

簡単なお礼と挨拶を済ませると我々は山小屋を後にした。気温は更に上がっていた。天気は非常に良い。昨日は全く吹かなかった風も出始めた。気温が上がっても風が出ると涼しく感じる。土曜日の下山は人も少なく、自分のペースで下りられる。また天候が悪く朝方まで雨も降っていたのでいつものように砂埃で苦しまされることもない。非常に快適、快調な下山である。さらに酸素の量も増えてきて呼吸も楽になる。

下山時も三人共に行動している。この三人を取り巻く下山中の富士山登山の勝者たちも登山時同様、殆ど入れ替わらない。常に見慣れた顔が続く。見慣れた顔の中にはUSAアーミーの集団も含まれる。彼らはすれ違うたびに

『Do you arrive at a long time?』
『んん~ン、About two hours』

『Do you arrive at a long time?』
『んん~ン、About one hour forty five』

『Do you arrive at a long time?』
『んん~ン、About one and a half hours』


何度も何度もすれ違いざまに声をかけて来る。何度も答えている間に到着に要する時間を全く同じに言ってしまった時、彼らは

『おかしいじゃないか!! さっき●時間って言ったじゃないか』
『さっきと、なんで同じ時間なんだ。変わってないぞ』
『本当のことを言え』

相当ばてている彼らは本当にUSアーミーなのか? ザックには確かに「US ARMY」と書かれていし、ブーツにも番号が振ってある。

私はただただ苦笑いだ。
                                                  
『もっと頑張れよ、ビリー隊長がこんな姿見たらきっと泣くぞ!』

当然私の心の中だけの言葉であった。

                                 次回へ続く・・・