壬生狼一家

Yahoo!ブログから引っ越ししてきた新参者です。宜しくお願いいたします。

『俺と富士山との出会いは・・・』 第2回目

翌日、目覚まし時計のベルの音で不機嫌な目覚めとなった。
まだ外は、にわかに明るみ掛け始めたばかりのころ頃だった。

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今考えると目覚まし時計??
って感じがするけど昔はどこに出かけても起きなきゃいけない時間が決まっているときは
目覚まし時計を持参していたんだよね。
今じゃ携帯でささっと時間設定しちゃえばいいんだけど昔は違った。
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軽い朝の食事が用意され受け付けない自分に負けないように押し込んだ。
荷物をまとめ旅館の外に出ると薄く霧が立ち込めていた。
遠くから犬の散歩をする、中年の男の人が近付いてくるが20メートルほど手前に来るまでは
表情は分からない。

そうしていると一台の白いバンが下の坂を上がってくる音が聞こえた。
低いギアにアクセルを思いっきり踏み込んだような音が聞こえる。
ヘッドライトが霧の中で滲んで見えてきた。

そのバンは旅館『江戸屋』の前でパザードランプを灯しながら止まった。
ドアが開き、高い『バーン』という大きな音が威勢のいい人がその車から降りてくるのを想像させた。


『おおっっ!!』

私に声を掛けてきたのかと思ったらいつの間にか私の後ろまで来ていた
旅館の若旦那に挨拶したようだ。

威勢のいい50代程の男性はいかにも山男と行ったよう出で立ちで
言葉は非常に荒々しい。

バンの背面の大きなゲートを明けると何やらダンボールに入った食材らしきものと
ネットや袋に入れられた野菜などが既に積まれていた。
更にこの『江戸屋』からダンボールやビニールに入ったものを積み込んでいった。
何でこんなのが積まれているのかこの頃は全く分からなかった。


若旦那は威勢のいい中年男性に

『彼よろしく』

と伝えると威勢のいい中年男性は私に向って

『乗るずらよ!』

ずら????、“ドカベン”の殿馬が語尾に『ずら』を付けるのは知っていたが
本物の人間が『ずら』を語尾につけるのは初めて聞いた。

特に車内で会話することもなく沈黙のままどこに連れられて行くのか不安なまま
富士山の裾野を高度を上げていっていることだけは分かった。



20分、30分乗っていただろうか。
開けた駐車場のようなところで車は停まった。
結局その間に会話は2、3言交わしただけであった。

車から中年男性は車を降りた。続いて私も降りた。
まだ辺りには霧が立ち込めていて視界が狭く何処だかよく分からない。
中年男性は霧の中に消えていく。
私はただその場で待っていた。

暫くすると轟音と共に地響きのような音が聞こえてきた。
揺れさえ感じる。
古びた巨大キャタピラー(ブルドーザー)が霧の中から現れた。
ハンドルを握るのはその中年男性だ。
横と後ろに別の男の人が2人乗っている。

いったい何だ?!

白いバンに詰まれた荷物をこのキャタピラーの荷台へと移す作業を手伝う。
既にプロパンガスの大きなタンクが数本載っている。
荷物を積み終えるとキャタピラーの荷台に私も乗り込んだ。

轟音と、真っ黒な排気を出しながらキャタピラーは動き出す。
車のようなサスペンション、ショックを和らげる装置は持ち合わしていない
キャタピラーは揺れや衝撃を全てお尻を通して受け付けなくてはいけない。


これからどうなるのかすら全く分からないままキャタピラーは動き出してしまった。



次回へ続く・・・・。